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名古屋高等裁判所 平成4年(行コ)15号 判決

名古屋市昭和区南山町一六番地の一カステーイリョ南山三〇一号

控訴人

貝沼正敬

同所

控訴人

貝沼千恵子

右両名訴訟代理人弁護士

村瀬尚男

小出正夫

名古屋市瑞穂区瑞穂町字西藤塚一番地の四

被控訴人

名古屋西税務署長事務承継者昭和税務署長 小野田公一

右指定代理人

泉良治

桜井連仁

谷口好旦

吉野満

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

1  被控訴人承継前の名古屋西税務署長が昭和五三年三月一日付でした控訴人貝沼正敬の同四九年分の所得税についての更正及び過少申告加算税賦課決定並びに控訴人貝沼千恵子の同年分の所得税についての更正のうち、控訴人貝沼正敬の同年分の課税所得金額が二三四二万七〇〇〇円を超えるとしてされた部分をいずれも取り消す。

2  被控訴人承継前の名古屋西税務署長が昭和五三年三月一日付でした控訴人貝沼正敬の同五〇年分の所得税についての再更生及び過少申告加算税賦課決定並びに控訴人貝沼千恵子の同年分の所得税についての再更正のうち、控訴人貝沼正敬の同年分課税所得金額のうち総所得金額に相当する分が三二八八万五〇〇〇円を超えるとしてされた部分をいずれも取り消す。

3  被控訴人承継前の名古屋西税務署長が昭和五三年三月一日付でした控訴人貝沼正敬の同五一年分の所得税についての更正及び過少申告加算税賦課決定をいずれも取り消す。

4  控訴人らのその余の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は第一、二審を通じこれを五分し、その二を控訴人らの負担とし、その余を被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一申立

(控訴人ら)

原判決を次のとおり変更する。

被控訴人承継前の名古屋西税務署長が昭和五三年三月一日付でした控訴人貝沼正敬の昭和四九年分所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分、昭和五〇年分所得税の再更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分並びに昭和五一年分所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分はいずれも取り消する。

被控訴人承継前の名古屋西税務署長が昭和五三年三月一日付でした控訴人貝沼千恵子の昭和四九年分の所得税の更正処分及び昭和五〇年分所得税の再更正処分をいずれも取り消す。

訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

(被控訴人)

本件各控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

第二主張

事実関係は、次に訂正、付加するほか原判決事実及び理由欄第二事案の概要記載のとおりであるから、ここにこれを引用する(以下、原判決引用部分については、「富田」とあるのを「富田」と読み替える。)。

1  原判決三丁表九行目から一〇行目にかけての「西税務署長」を、「被控訴人承継前の名古屋西税務署長(以下「西税務署長」という。)」と、同丁裏末行「九二五六」を「九二六五」と訂正し、同六丁裏一〇行目「の一」を削除し、同七丁裏一行目「からの」の次に「昭和四九年分の」を付加する。

2  同八丁表三行目の次に改行して、

「また原判決は、梶田に関する昭和四九年分の収入をいわゆる発生主義に基づいて四二八八万二六一一円と認定したが、そのうち一五三二万六六一一円は未収利息であるところ、原判決は右貸付にかかる元本が昭和四九年度において回収不能であることを認め貸倒れ処理しているのであるから、右一五三二万六六一一円の未収利息も同年度において貸倒れ処理されるべきである。」を挿入する。

3  同八丁裏一行目の次に改行して、

「また右貸付金四六五四万円と回収金三五五〇万円の差額一一〇四万円は、昭和五〇年分において貸倒れ処理されるべきである。」を挿入する。

4  同九丁表八行目「原告正敬」から同丁裏四行目までを次のとおり改める。

「控訴人正敬は富田に対して一億五〇七〇万円の貸金(以下「富田貸付金」という。)を有していたが、右貸付金については田中鋼治(以下「田中」という。)及び田中倉庫株式会社(以下「田中倉庫」という。)が連帯保証人となり、田中所有土地及び同土地上の田中倉庫所有建物(以下「本件土地、建物」という。)に極度額二億円の根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)が設定されていた。ところで、担保権が設定されている債権については、担保物が農地等容易に処分することができないものである場合は、当該担保物を処分した場合に得られると見込まれる金額を控除した金額を、貸倒れ処理することができるものと解すべきところ、昭和四九年一一月当時、本件建物の一部に三幸倉庫株式会社(旧商号株式会社田中運輸倉庫、以下「三幸倉庫」という。)の賃借権が設定されて同社が現実に専有していたり、本件土地上に柳原行雄所有の本件根抵当権の目的外建物が存在していたことからすると、本件土地、建物が事実上及び法律上容易に処分できないものであったことは明らかである。そして、控訴人正敬は昭和四九年一一月五日、名古屋地方裁判所に本件土地、建物の競売申立をしたが、その鑑定評価額は合計二億二八九三万円であり、先順位の被担保債権の総額が約二億円であったから、富田貸付金については元本の一部すら回収できないことが明らかであった。現に本件土地建物の落札価額は二億六〇〇〇万円であったから、控訴人正敬に対する配当見込額は、先順位の被担保債権額二億円を控除した六〇〇〇万円が限度であったといえる。したがって、富田貸付金につては、六〇〇〇万円を超える額を昭和四九年分において貸倒れ処理すべきであり、未収利息も全額貸倒れ処理すべきである。

なお、右不動産競売手続において、賃貸借取調報告書、不動産評価書等が作成されたのは昭和五〇年であるから、富田貸付金の回収不能が判明した時期が同年とされるのであれば、控訴人らは予備的に貸倒れ損失を計上すべき時期を同五〇年分と主張する。」

第三証拠

本件記録中の原審及び当番における各書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

第四争点に対する判断

当裁判所は、控訴人らの請求のうち昭和四九年分及び同五〇年分については主文一項1、2の限度で理由があるが、その余は失当であると判断する。その理由は、次に付加、訂正をするほか原判決事実及び理由欄第三判断の認定、説示と同じであるから、ここにこれを引用する(なお、書証については、例えば「甲一」とあるのは「甲第一号証」と読み替え、人証については、「証人」とあるのを、「原審証人」と読み替える。)。

1  原判決一二丁裏三行目「証拠」から同一三丁表七行目「正敬本人)」までを「成立に争いのない甲第一、第二号証、第三号証の一ないし三、第六号証の二ないし五、第八号証の一ないし四、第九号証の一、二、第一一号証の一、三、第一二号証の一、二、四ないし六、第一三号証の一、二、五ないし七、第一四号証の一、二、四、五(原本の存在も含む)、第一五号証の一、二、第一六号証の一ないし九、第一七号証、第一九号商、第二一、第二二号証、第二四号証、第二五号証の一、二、第二九号証の一ないし五、第三一ないし第三三号証の各一、二、第三七号証、第四〇号証、第四六号証、第六七ないし第七七号証、乙第一号証、第一一号証(原本の存在も含む)、第一二号証の二(原本の存在も含む)、第一三号証の三(原本の存在も含む)、第三三号証の一ないし六、控訴人正敬の原審における本人尋問の結果(第一回、以下「控訴人正敬の原審第一回供述」という。)により成立の認められる甲第六号証の一、六、七、第七号証、第八号証の五(原本の存在を含む)、第一〇号証の一ないし三、第一一号証の二、第一二号証の三、第一三号証の三、四、第一八号証の一、二、第二〇号証の一、二、第二三号証、第二五号証の三、第三〇号証、第三八号証、第四一号証、第四二号証の一、二、第四三号証の一ないし八、原審証人貝沼千秋の証言(第一回、以下「千秋証言第一回」という。)により成立の認められる甲第四号証の一ないし二七、第五号証の一ないし四一、第二六号証の一、二、第二七、第二八号証、第六〇号証、第六一ないし第六三号証の各一ないし四、原審証人小川安弘の証言(以下「小川証言」という。)により成立の認められる甲第四七号証、同長谷川甚の証言(以下「長谷川証言」という。)により成立の認められる甲第四八号証、同山本正一の証言(以下「山本証言」という。)により成立の認められる乙第一二号証の一、第一三号証の一、第一七ないし第一九号証、第二〇号証の一、第二一号証、乙第二二ないし第二四号証の各一、第二五号証、第二六号証の一、付属書類の成立については争いがなくその余の成立は同証言により認められる乙第一六号証、同加藤満治の証言(以下「加藤満治証言」という。)により成立の認められる乙第一五号証、弁論の全趣旨により成立の認められる甲第一四号証の三、第一八号証の三、山本、加藤満治、小川、長谷川の各証言、原審証人加藤英治、同加藤末二の各証言(以下「加藤英治証言」、「加藤末二証言」という。)控訴人正敬の原審第一回供述」と訂正する。

2  同一四丁表三行目「業容」を「業績」と、同二〇丁表四行目「三五」から同五行目「本人」までを「第三三号証の各一、二、第三七、第三八号証、控訴人正敬の原審第一回供述により成立の認められる甲第二四、第三五号証の各一、二(いずれも原本の存在も含む)、第三六号証、加藤満治証言、控訴人正敬の原審第一回供述」と訂正する。

3  同二一丁表七行目「甲二六ないし二八」を「甲第二六号証の一、二、第二七、第二八号証」と、同八行目「同貝沼」から同九行目「本人」までを「千秋証言(第一、二回)、控訴人正敬の原審第一、二回供述」と訂正する。

4  同二一丁裏七行目「(五〇年分)」の次に「、有限会社スター商事(昭和五〇年分)」を付加し、同一〇行目、同二二丁表八行目及び同丁裏四行目から五行目にかけての「原告正敬本人」をいずれも「控訴人正敬の原審第一回供述」と訂正する。

5  同二三丁表五行目「同貝沼」から「本人」までを「千秋証言(第一、二回)、控訴人正敬の原審第一、二回供述」と訂正し、同二三丁裏七行目「できない」の次に「から、昭和五〇年分の収入金額は零である」を付加する。

6  同七行目の次に改行して、

「有限会社スター商事の昭和五〇年分の利息収入を、未収分も含めて利息制限法の制限内で算出すると、原判決別表九の5記載のとおり二一〇万円となることが認められる。」を挿入する。

7  同二四丁表四行目「六四」を「六三」と訂正し、同六行目「及び」の次に「千秋証言第一回により成立の認められる」を付加し、同九行目「証人貝沼千秋」を「千秋証言第一回」と、同二五丁裏八行目「証人」から「本人」までを「千秋証言第一回、控訴人正敬の原審第一回供述」と訂正し、同二六丁表二行目「一〇の」の次に「二の」を付加し、同丁裏七行目及び同二八丁表九行目の「原告正敬本人」をいずれも「控訴人正敬の原審第一回供述」と、同三〇丁表四行目「及び二」から同五行目「本人」までを「、成立に争いのない乙第二四号証の二、小川証言、控訴人正敬の原審第一回供述」と、同三一丁裏一行目「原告正敬本人」を「控訴人正敬の原審第一回供述」と、同六行目「及び二」から同七行目「一二」までを「、原本の存在及び成立に争いのない乙第二二号証の二、山本証言により成立の認められる乙第二二号証の三の一ないし一二」と訂正し、同三二丁裏五行目「一二、」の次に「山本証言により成立の認められる」を付加し、同六行目「原告正敬本人」を「控訴人正敬の原審第一回供述」と、同三三丁裏二行目「甲三九」から同三行目「本人」までを「弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第三九号趙耀東の一、二、千秋証言第一回、控訴人正敬の原審第一回供述」と、同三四丁表一行目「原告正敬本人」を「控訴人正敬の原審第一回供述」と、同七行目「乙三八の一ないし三」を「成立に争いのない乙第三八号証の1ないし三」と訂正し、同末行「また、」の次に「原審」を付加し、同三五丁表五行目「原告正敬本人」を「控訴人正敬の原審第一回供述」と訂正し、同丁裏一〇行目「八、」の次に「控訴人正敬の原審第一回供述により成立の認められる」を付加し、同末行から同三六丁表一行目にかけての「原告正敬本人」及び同三八丁表四行目の「原告正敬本人」をいすれも「控訴人正敬の原審第一回供述」と訂正し、同丁裏六行目「証人加藤文夫」を削除し、同三九丁表二行目「原告正敬本人」を「控訴人正敬の原審第一回供述」と、同七行目「甲二六」から同八行目「本人」までを「甲第二六号証の一、二、甲第二七、第二八号証、千秋証言第一回、控訴人正敬の原審第一回供述」と訂正し、同丁裏三行目「証人」から同四行目「本人」までを「千秋証言第一回、控訴人正敬の原審第一回供述」と訂正し、同六行目「3」の次に「(二)」を付加する。

8  同四〇丁裏三行目「同貝沼」から「本人」まで及び同四二丁裏八行目「同貝」から同九行目「本人」までをいずれも「千秋証言(第一、二回)、控訴人正敬の原審第一、二回供述」と訂正し、同四二丁裏一行目「なった」の次に「と」を付加し、同四三丁裏七行目の次に改行して、

「そして、福島所有土地を担保にした二億円の貸付金の未収利息一五三二万六六一一円についても、梶田に対し強制執行手続きをした昭和四九年一二月一三日までの時点で貸倒れになったものとかいするのが相当である。

また樋口所有土地を担保にした四六五四万円の貸付金についても、樋口が支払った三五五〇万円との差額一一〇四万円は、前記説示のとおり、梶田から回収することは不可能な状態であったから、者上保証人樋口との間で調停が成立し、同人から三五五〇万円が支払われた昭和五〇年三月末日の時点で回収できないことが客観的に確実になったということができ、貸倒れになったものと解するのが相当であんる。」を挿入する。

9  同九行目から四五丁裏三行目までを次のとおり改める。

「前掲甲第四号証の一、第一六号証の一ないし九、第七二ないし第七七号証、成立に争いのない甲第七九、第八〇号証、第八三号証の一、二、第八四号証の一ないし一六、第九八号証、第一〇一号証、原本の存在及び成立とも争いのない甲第九四号証、原本の存在並びに証明書及び官署捺印部分の成立については争いがなく、その余の部分の成立は控訴人正敬の当審供述によって認められる甲第九九号証、千秋証言第二回、控訴人正敬の原審第二回及び当審供述によれば、次の事実が認められる。

控訴人正敬は、昭和四九年三月二二日までに、富田に対し合計一億五〇七〇万円の貸付金を有していたが、右貸付金については田中及び同人が代表取締役をしていた田中倉庫が連体保証人となり、同人ら所有の土地、建物に極度額二億円の根拠当権が設定されていたこと、なお、右土地、建物には被担保債権総額約二億円の先順位担保物件が設定されていたこと、富田は同年七月ころ行方不明となり、貸付金の使途であった映画制作の事業も頓挫し、同人からの債権の回収は事実上不可能となったこと、そこで、控訴人正敬は名古屋地方裁判所に右土地、建物について競売を申立て、同年一一月五日競売開始決定がなされたこと、右競売手続における本件土地、建物、鑑定評価額は、同五〇年二月一二日時点において合計二億二八九三万円であり、控訴人正敬が合計二億六〇〇〇万円で最高価競買人となり、同五二年一〇月六日競落許可決定がなされ、同五三年三月七日控訴人正敬に対し合計三六五〇万七二七五円の配当がなされたこと、右競売申立当時、本件建物の一部に三幸倉庫の貸借権が設定されて同社が現実に占有し、本件土地上に柳原幸雄所有の本件根抵当権の目的外建物が存在していたこと、田中倉庫は同五〇年四月二五日手形取引停止処分を受けたことが認められる。

右事実によれば、田中壮途が手形取引停止処分を受けた同五十年四月二五日時点において、田中倉庫及び同社の代表取締役であった田中から、富田貸付金を回収することは事実上不可能であったものと推認されるが、富田貸付金については、本件土地、建物に極度額二億円の根抵当権が設定されていたのであるから、本件土地、建物によって担保されている二億円は回収不能であることが客観的に確実になったものとはいえない。したがって、右二億円の被担保債権のうち三六五〇万七二七五円の配当金を除くその余の部分については、被担保債権の回収が不可能であることが明らかになった同五三年三月七日を貸倒れの発生時期と解するのが相当である。他方、右二億円を超える部分はいわゆる一般債権であるから、本件土地建物の被担保債権の総額が四億円以上であるのに対し、鑑定評価額が二億二八九三万円であったことからすると、一般債権の弁済に充てられる剰余金の生ずる余地はなく、田中倉庫が手形取引停止処分を受けた同五〇年四月二五日時点で回収不能が客観手に確実になったものとして、右時点までに発生していた元利二億円を超える未収利息については右時点をもって、その後に生じた未収利息については生じた時点をもって、それぞれ貸倒れの発生時期と解するのが相当である。

なお、控訴人らは、本件建物の一部に第三者の賃借権が設定されて現実の占有がなされ、また本件土地には第三者所有の本件根抵当権の目的外建物も存在しており、その処分が困難であったことからすると、本件土地、建物の処分によって回収が見込まれる六〇〇〇万円を除いた残額については、昭和四九年中又は五〇年中において貸倒れの発生を認めるべきである旨主張する。しかし、同四九年及び五〇年の時点では、本件根抵当権の実行によって富田貸付金の一部又は全部の回収が見込まれ、その回収が期待できる金額は本件土地、建物がいくらで売却できるかにより未だ不確実であったのであるから、鑑定評価額が二億二八九三万円であったとしても、当時、被担保債権額二億円分については回収できないことが客観的に確実であったといえず、右主張は採用することができない。」

10  同九行目「発生した」の次に「利息」を付加し、同四六丁表一行目及び二行目を次のとおり改める。

「以上の事実に基づき、本件貸付けによる所得金額を計算すると、収入金額の明細は原判決別表一一の一記載のとおりであり、収入金額合計は昭和四九年分が一億〇九五七万九二九八円、同五〇年分が四八三九万四五〇〇円となるところ、支払利息、貸倒損失、雑費の明細は別紙記載のとおりであり、支払利息合計は同四九年分が八八九九万四〇〇〇円、同五〇年分が四五八四万三九二八円、貸倒損失額合計は同四九年分が三七〇二万一一一一円(梶田貸付金のうち二億円の貸付残金二一六九万四五〇〇円と未収利息一五三二万六六一一円の合計額)、同五〇年分が四三〇二万三三九三円(梶田貸付金のうち四六五四万円の貸付残金一一〇四万円富田貸付金の未収利息のうち三一九八万三三九三円の合計額)、雑費は同四九年分が零、同五〇年分が一〇万円であって、右控除額合計は同四九年分が一億二六〇一万五一一一円、同五〇年分が八八九六万七三二一円であるから、本件貸付けによる差引所得金額は、別紙記載のとおり同四九年分が一六四三万五八一三円の損失、同五〇年分が四〇五七万二八二一円の損失となる。」

11  同四六丁裏五行目から同四八丁表八行目までを次のとおり改める。

「1 昭和四九年分の本件貸付による事業所得は一六四三万五八一三円の損失であるから、これを前記第二の一2(一)の控訴人正敬の同年分の他の所得(配当所得金額三九九七万九〇〇〇円、給与所得金額一〇二〇万円、譲渡所得金額(分離短期)九四〇万九二六五円の損失)と通算すると、同控訴人の同年分の所得金額は二四三三万三九二二円となり、課税所得金額は、これから所得控除額九〇万五九五〇円を控除した二三四二万七〇〇〇円(一〇〇〇円未満切り捨て。以下同じ。)である。

したがって、昭和四九年分の本件各課税処分のうち、控訴人正敬及び合算対象世帯員である同千恵子の各所得税について、控訴人正敬の課税所得金額が二三四二万七〇〇〇円を超えるとしてなされた部分は違法であるが、その余の部分は適法である。

12  昭和五〇年分の本件貸付による事業所得は四〇五七万二八二一円の損失であるから、控訴人正敬の同年分の課税所得金額のうち総所得金額に相当する分は、これを前記第二の一2(二)の控訴人正敬の同年分の他の所得(配当所得金額六一六五万〇六〇〇円、給与所得金額一二二七万円、譲渡所得金額(総合短期)五〇万円と通算し、更に所得控除額九六万二四〇〇円を控除した三二八八万五〇〇〇円である。したがって、昭和五〇年分の本件各課税処分のうち、控訴人正敬及び合算対象世帯員である控訴人千恵子の各所得税について、控訴人正敬の課税所得金額のうち総所得金額に相当する分が三二八八万五〇〇〇円を超えるとしてされた部分は違法であるが、その余の部分は適法である。」

第五結論

以上の次第で、控訴人らの本訴請求のうち昭和四九年分及び同五〇年分については主文一項1、2の限度で理由があるが、その余は失当であるから、控訴人らの本件控訴は一部理由がある。

よって、右と一部結論を異にする原判決を変更することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法九六条、八九条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 土田勇 裁判官 喜多村治雄 裁判官 林道春)

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